僕の小説第七弾「僕のパンヤ島滞在記」

初めに断っておくことがある。
それはこれから記す物語が僕の脳内で彩られた物語だからだ。

初夏。
涼しかった春は終わり暑さを感じ始める季節。
僕は緑の草原でクラブバッグを担いでいた。
僕は一人だった。
たった一人でクラブバッグを持ち草原を歩いていた。
一面に彩られる草原。
この景色は絶景だ。
緑が僕の視界に広がり自然の雄大さを感じさせる。
この場所で僕はクラブバッグを持ち草原を歩いている。
そして平らな所に足を止める。 ティーグラウンドと呼ばれるところだ。
僕はクラブバッグから一番ドライバーを出しティーグラウンドにティーを挿しゴルフボールをティーの上に乗せボールの前で構える・
ボールを見据え精神を集中する。
少しでも遠くに飛ばすために。
前方とボールを交互に見、一番ドライバーを振り上げ振りかぶる。
フェースがボールに当たりいい音を出しボールが飛んでいく。
僕は振りかぶった一番ドライバーを両手に持ちボールの行方を確かめる。
一面の蒼。
ボールは空高く飛びはるか彼方へと飛んでいく。
ボールは見えなくなり僕は緑の景色へと視線を移す。
なぜ僕は趣味でもないゴルフなんてやっているんだろう?
話しは昨日にさかのぼる。
行きつけのカフェでの出来事。
「なあ、お前ゴルフでもやってみないか?」
数年来の友人であるジョージはいつものレーコーを飲みながら僕にそう言った。
僕は「いきなりどうして?」と聞き返した。
本当に唐突だったからだ。 少なくとも僕にとっては。
「なあに、俺も何年かやってるんだが面白いぞ」ジョージはカップを持ちそう言ってきた。
僕はいつものミルクを飲みながら「君がゴルフをやっているなんて知らなかったよ」と言い返した。
ジョージは剣を両手に持ち魔物を倒すようなことをやっていたはずだ。
僕は疑問に思った。
まあ、僕も弓矢を持ってゴブリンを倒すようなことをしていたから不思議ではないのだが。
ジョージは「まあ、俺も狩りには飽きたわけよ」そう言った。
よく言う。
一流のハンターとして大きなギルドに所属している身分で。
努力が嫌いな僕は三流止まりだったが大したギルドにも所属せず依頼も殆どなかった僕とは違いジョージはそれなりに大きいギルドに所属してマスターからの依頼もかなりあった。
暇な僕とは違いジョージは依頼で忙しいはずなのだがいつの間にゴルフなんてやっていたんだろう?
「ただのゴルフじゃないんだ、伝説の魔王を封じた儀式なんだ」
僕の目を見ながらそう言った。
伝説の魔王?
ゴルフが?
とても信じられなかった
ドラゴン一体倒すのに3つ4つのギルドが力を合わせてやっと倒せるかどうかなのにゴルフで魔王?
ジョージは冗談を言っているようではなかった。
僕は口につけていたカップを放しソーサーにおいて言った。
「ジョージ、どうしてゴルフが魔王を封じる儀式なんだい?」
「昔の話だ。どこかからやってきた若者が魔王に苦しめられていた島で魔王を封じた。そういう言い伝えがある。それがゴルフなんだ。」
ジョージはソーサーからカップを取りながらいった。
カップを口につけ一口飲み「島の魔術師たちが力をあわせ若者にクラブを作ったんだ。そのクラブで魔力を込めたボールを打ちカップに入れることで魔王を封じたと島では伝えられている」そう言った。
「へえ、そんな島があるんだ、知らなかったな。危険はないのかい?」
僕はカップを持ち聞いた。
「今は観光名所だ、もう魔王は封じられてるからな」
ジョージは椅子の背もたれに背中を倒しそう言った。
僕は少し興味を持った。
観光名所になっている様な所なら危険はないからだ。
僕は危険な場所を好まない。
ハンターであるにもかかわらず。
ジョージから見れば僕は情けなく見えるのだろう。
だから安全なゴルフを勧めた。
僕はそう判断した。
ジョージは「お前が危険に身を置きたくないのはわかってる。いつも危険な依頼は請け負わないからな」そう言った。
事実だった。
僕は以前まで村の警備をやっていた。
ゴブリンがやってきて農作物を荒らすのを阻止するのだ。
もちろんそんな依頼は三流のハンターがすること。
だから他のハンターたちは何年たってもそんな依頼しかしない僕をあざ笑っていた。
「他の奴らはドラゴン退治に行ったり街と街を行きかう商団の護衛をやったりしてるのにゴブリン退治しかしない臆病者だ」と。
僕はそれでもかまわないと思っている。
ささやかな報酬と安全な場所さえあれば何も要らない。
僕は未知の冒険とかダンジョンのお宝なんかにこれっぽっちもあこがれてなんていない。
そういうのはもっと目のギラギラした奴のやることだ。
そういえば誰だったかに言われたことがある。
「お前にはガッツがない」と。
まあ、これも事実だ。
と、まあ色々言ったがゴルフをやるのには賛成だ。
観光名所で魔王封じの儀式。
なかなか面白いじゃないか。
今までの報酬の貯えは充分にある。
一月二月は遊んで暮らせるはずだ。
となればジョージの提案に乗ってみるのも悪くないだろう。
僕はジョージに「うん、わかった。その島に行くよ」と言った。

僕は家に戻り旅行の準備を始めた。
行先はパンヤ島。
パンフレットによれば大荷物はいらないそうだ。
服、ズボン、靴、クラブ、全部現地でそろえることができるようだ。
今までに行ったことのない娯楽施設みたいだ。
たくさんお金がかかるのだろうか?
たくさんお金がかかるようなら旅行をあきらめるしかない。
僕にはその心配があった。
宿泊その他は他では銀貨三枚は最低必要だったからだ。
こんな娯楽施設ではいったいどれくらいかかるのか?
僕は家にるお金を見た。
全部で銅貨七十五枚、銀貨十七枚、金貨四枚。
一人暮らしなら三月は何もしなくても暮らせる。
だが、こんな娯楽施設ではどれくらい持つのか?
まあ、一月も遊べれば十分か。
その後はまた酒場にでも行って依頼をとって来よう。
そうと決まれば出発だ。
僕は最低限の荷物を持ち街の乗合馬車の駅に向かった。
街の駅には様々な人がいる。
隣町の商店に買い出しに出る人、城に言って務めをはたしてくる人、商人が大きな街に行って品物を仕入れに行く人。
僕は国を二つ超えた港町に行くために乗る。
僕のいる街は大陸の中央部にあって海からは遠いのだ。
馬車に揺られつつ乗り換えつつ港町にたどり着いた。
もちろん夜盗などに襲われないよう乗合馬車を運営してる人が護衛を雇っているが。
僕はその手の依頼は引き受けない。
港町にはたくさん人がいる。
僕はパンヤ島に行く為の船を捜しそれに乗り込んだ。
船には軽めの服装をした人がたくさんいる。
たぶん僕が一番お金を持っているだろう。
そんな人たちだ。
まあ、僕みたいに一月もパンヤ島に滞在するなんて人はいなさそうだからかも。
船に揺られて四日。
僕はパンヤ島に辿り着いた。
まず驚いたのが入港してからの出迎え。
「ようこそパンヤ島にいらっしゃいました。 ここは誰もが勇者になれる場所。 様々な風景があなたを待っています。 どうぞおくつろぎください。」
そんな声に導かれて僕はパンヤ島に到着した。
次に驚いたのが僕の持っているお金はここでは使えないこと。
PPというものに交換する必要があるらしい。
僕の持っていたお金は一部を除きPPに交換した。
全部で七十五万PPになった。
これで一月は遊べるはずだ。
さらに驚いたのが東方の島国に咲いているサクラがあったり、戦艦があったりと見たこともないような場所がいっぱいある。
僕はまず商店に行った。
そこで行ったのは服の購入とクラブバッグの購入。
十二万PP使った
その足で宿に行き自分の荷物を預け案内に従い草原へ。
そして冒頭に行くのだが、一打目は何とかなだらかな場所に乗った。
初めてやったゴルフは想像より難しくフェースをボールに当てるのがやっとだった。
この場所なら危険はないだろうと考えたのは僕の間違いだったのか?
まあ危険はないのだけれど努力が嫌いな僕に遊びこなせるのか?
そう思ってしまった。
そんなこんなで草原と海のコースを回った。
結果だけを言おう。
+16というスコアだった。
これがいいのか悪いのか僕にはまだ判断できない。
なぜなら始めたばかりなのだ。
なので深く考えないこといする。
僕はコースを回り終え宿に戻った。
宿に戻るとちょうど夕食が始まるところだった。
僕は食堂に行き品書きから小腹が膨れるものを頼んだ。
すると隣に座ってた人から「パンヤ島は初めてかい? 来て驚いただろ?」と声をかけられた。
僕はいきなり声をかけてきた男に対して「いやあ、今までに来たことがないような場所だったから本当に驚いてしまったよ」
名前も知らないような食事を食べながらそう答えた。
すると彼は「まあ、初めてならそういう感想だろうな。 何せ戦艦があるんだぜ? 他にもわっかの中に入るとボールがすっ飛んで行く所もあるし。 それにそこは砂漠だぜ? 信じられるか? 一つの島でそんな風景を楽しみながらゴルフをやるなんて最高の贅沢だ」
発泡酒の入ったジョッキを片手に笑いながらそう言った。
彼のテーブルには皿が二つと発泡酒の入ったジョッキが置かれていて
僕のテーブルには皿が一つとミルクが入ったカップが置かれていた。
僕は酒が飲めないのだからこれでいいのだ。
僕は皿に入った料理を食べながら「今日初めて来たんだよ、こんな所があるなんて僕は知らなかったよ。 今までは小さな村でゴブリン退治をしていたからね」
すると彼は僕の顔を見て「お前ハンターだったのか、あれは金もうけにいいらしいな。 上なんか一依頼こなすだけで金貨五枚とかもらえるらしいな。 その分命の危険があるらしいが」
そういうセリフは僕に向けないでほしい。
僕は村を警備して一日に銀貨六枚もらっていたようなハンターだったからだ。
もちろんそんな自分を軽蔑なんてしていない。
人には分相応というものがあるし何より身の安全が保障されるからだ。 まあたまに夜盗が入ってくる事もあるのだがその時は夜盗から金品を頂戴して村長に突き出して報酬を得るというようなことをやっていた。 後ろめたいことだが夜盗が役人に訴えるなんてことはないからこういうこともできる。
それで他の夜盗に目をつけられたこともあるのだが、夜盗なんてたかがしれたもの。
ゴブリンよりは強いが僕よりは弱い。
本当なら僕は中ランクの依頼もこなすほどの腕は持っているのだが中ランクの依頼には命の危険がある。
だから僕は村の警備などという低ランクの依頼を請け負っているのだが村のみんなからは感謝されている。
村の宿はいいところだし食事もおいしい。 少なくとも僕にとっては。
隣に座っている彼はどこから来たのだろう? 何日滞在するのだろう? 興味は尽きないが聞かないことにする。 人に対して詮索するのはハンターの風上にも置けないからだ。
彼は言った。
「ここには魔物なんていないしハンターが来てもする事なんてゴルフくらいしかすることがないぜ。 何をしに来たんだ?」
何をしに来たかなんて決まってる。 ここは娯楽施設だ。
「いや、ここにはちょっとした休暇で来たんだ。 まあ、一月ほど滞在する予定ではあるんだけど」
すると彼は驚いた表情で「一月も!? ハンターともなれば金持ちなんだなあ、普通二、三日だろ?」
僕は二月三月村にいることが普通だったから一月居る事に不思議さは感じないのだが。
まあ、ここは村とは違う。
村では見かけないような場所だ。
食事も村で見ないようなものばかりだし、建物もとこかの城と見まごう程だ。
僕はこんな所に来たことがない。
いつも村と街の往復かよくて城下町のカフェでミルクを飲んで過ごしているのが僕の日常だからだ。
そんな僕がジョージの勧めでここにいる。
なんだかおかしな事だった。
まあ、ジョージの勧めは理解できる。
何度も言うが僕は危険な場所を好まない。
ささやかな報酬と身の安全が保障される場所さえあれば十分だ。
僕はすでに食事を終え隣に座っている彼を見ると発泡酒のおかわりをしていた。
「じゃあ、またどこかで」僕は別れの挨拶を言うと彼は「またな」と答えた。
僕は食堂を後にし宿の二階に上がり僕の部屋に戻った。
村にある宿とは違う部屋で居心地が悪い。
僕はどうやら根っからの貧乏性のようだ。
明日からはどこを回ろうか?
今日はそんなことを考えながら眠りについた。

朝は村にいた頃の習慣で日が昇る頃に目を覚ました。
目を覚ますといつものように身支度を整え一階の食堂へと向かった。
まだ早いためか人がいない。
食堂の品書きから適当に品物を選び従業員に食べたいものを伝え注文を完了した。
僕は食事が来るまでの間、今日のことを考えた。
今日はどこのコースを回ろうか決めかねている。
どうやら掲示板のようなものに今日やっているコースが掲示されているようなのだ。
だから僕は広場で掲示板を見なければいけない。
そうと決まれば早速食事を済ませパンヤ島の広場へと向かった。
朝も早いというのに人は多い。
パーティーの様な人たちもちらほらいる。
個人で打つ人もいるみたいだ。
僕は後ろから掲示板を見た。
朝から回れるコースは十四コース。
どうやら毎日のように大会をやっているみたいだ。
全部で十四コース、午前9時から大会は始まるらしい。
各三十人が参加するが僕はそれに参加しない。
まだ昨日始めたばかりで右も左もわからないからだ。
だからゴルフというものを教えてもらうために上手い人の相方になれればいいと思いランクが上の人を探した。
探している人はすぐに見つかった。
上手い人がランキングにいたからだ。
午後4時からIce spaというコースでランキングに載っている人が対戦募集をするというような掲示があったからだ。
僕はそれに参加しよう。
そうと決まればその人と連絡を取りたいのだがどこにいるのかわからない。
時間が来るまで待つしかないのだろうか?
僕はしばし考える。
すると声をかけてくる人がいた。
「ねえ君、パンヤ島ははじめて?」小柄な女性だった。
何よりも目を引くのが髪の毛が銀色というところ。
北方の人の様だ。
「ボクもつい最近この島に来たんだ。 よかったらボク達と回らない?」
女性は微笑みながらそういった。
しかし僕は上手い人と回りたいのだ。
手本とする為に。
僕は答えた「今日午後4時からランキングに載ってる人と回りたいから」と。
すると女性は笑みを崩さず「別に今日じゃなくてもいいよ、いつにしようか?」と言ってきた。
僕は考え「じゃあ明日にしよう」と答えた。
「いいよ、じゃあ明日回ろう」と女性は言った。
そうだ、言い忘れていたことがある。
僕は周りからエヌと呼ばれている。
僕もそれを自称してるし、まあ言ってみればあだ名みたいなものかな?
行き付けの茶店の人たちからもそう呼ばれているしそれでいいのだろう。
僕は軽く自己紹介をした。
女性の名前はエリスというらしい。
聞いたことのない名前だ。
まあ当たり前か。
僕は村と街しか知らないしこういう娯楽施設には来た事がないのだから。
僕と女性はわかれ僕は宿に女性はコースのほうへと移動した。
宿に戻る頃には食堂にはたくさん人がいた。
まだそんな時間なのか、4時までどうしようか?
一度見学にでも行ってみるか。
僕はそう思いたつと再び広場へと向かった。
ここから様々なコースを見て回れるし僕も今日回ることになるice spaというコースの下見にもいける。
僕は標識に従いice spaというコースを見に行った。
季節は初夏。
涼しい春は過ぎ暑さを感じ始める時分。
僕は普段着で山を越えた。
先に言っておこう。
僕は甘く見ていた。
パンヤ島というところを。
山を越えるとやってくる猛烈な寒さ。
辺りの風景は一変し白銀の世界へと変貌した。
僕の体は震え舌が上手く動かない。
全身に鳥肌が立ちその場でうずくまる。
とても動ける状態じゃない。
僕はいまさらながらに悟った。
こちらに向かう人たちがなぜ冬の登山の格好だったのかを。
正直頭がおかしいのかと思っていた。
が、どうやらおかしかったのは僕の方だった
こんな状態では見学どころではない。
いったん広場に戻り商店に向かう。
商店で登山服を買い宿に戻る。
宿に戻った後は登山服に着替え再び山を越え白銀の世界へと赴く。
改めてみてもすごい。
山をひとつ越えただけで暑いくらいだった陽気が凍えるような寒さへと変わった。
僕はようやく一息ついてコースを見た。
前方には軽い傾斜、左手には山のような場所、右手には温泉?
どういうところだここは。
僕はため息をつきコースを歩いた。
すでに大会は始まっていてこのホールに人はいない。
みんな先に行ってしまったようだ。
その方がいいか。
今の僕じゃとても大会に参加できないし。
コースを歩いてみる。
白銀の世界に真っ平らな円形の場所がある。
どうやらそこからボールを打つらしい。
その場所から前方の傾斜方面へと歩いてみる。
するとなだらかな場所がある。
この方向にボールを打つと後が打ちやすいな。
僕はそう思いさらに歩みを進め、やがて複雑な円形の場所にたどり着いた。
そこは縦横に線が入っていて中央付近に穴がある。
なるほど、ここにボールを入れるんだな。
僕は複雑な円形がある場所を歩きながらそう考えた。
やがて円形の場所は過ぎ人が通れる道が現れた。
僕は歩みを進め道を通った。<2013.6.27><2014.1.13>
すると今度は手前に白い円形、その奥にまっ平らな白銀、その奥に複雑な円形。
今度のコースは短いコースのようだ。
僕は進み白銀の上に足を踏み入れた。
視界が急変する。前方から空へと。
そして後頭部への衝撃。
頭に鋭い痛みがあって僕は転んでしまったと思った。
そこは氷だった。
一面の氷が後頭部にあった。
身を起こす。
この場所は平らだが打つこともおぼつかない。
だからこの場所には落とさないようにしよう。
僕は慎重に歩き氷の場所から抜けた。
たどり着いたのはさっきと同じような縦横の線と中央の穴。
そして奥にある道。
僕は奥へと進んだ。
今度は左側に氷と池、右側になだらかな場所。
打つなら右側だな。
僕はなだらかな場所を進みながらそう考え、もうこの辺で充分だろうと思い道を引き返した。
ice spa から広場に戻ると時間は11時だった。
ちょっと早いけど昼食にしようか。
そう思い宿に戻った。
食堂はまだ時間が早いにもかかわらず人がぽつぽつといた。
みんな大会には出ていないのだろうか?
僕は辺りを見回し席の空いているところに座った。
品書きから定食を注文ししばし待つ。
しばらくすると出来立ての定食がやってきて僕はそれを食べる。
やはりこういう娯楽施設の食べ物は美味しいが、村のおかみさん食べ物の方が美味しいと思う。
僕は定食を食べ食堂を後にした。
時間は12時。
この後は対戦募集してる人を探しに行くか。
そう思い立つと広場に行き掲示板の前まで来た。
みんなこの時間は大会か昼食の為、人はまばらだ。
僕は対戦募集してる人のところを見た。
まだ空いていた。
広場の案内係に「午後4時にice spaで対戦募集してる人はどこですか?」ときいた。
案内係の人は「その人なら今、宿にいるはずですよ」と言った。
僕は部屋の場所を聞き広場を後にした。
宿に戻るとその人の部屋に行き扉を2度3度叩いた。
すると中から「今行きますよー」と声がした。
僕はしばし待ち中から出てくる人が出てくると互いに挨拶を交わした。
「今日の4時から対戦したいエヌと言います。あなたとお話がしたかったんですよ」
僕は部屋の前で頭を下げながら言った。
すると彼は笑いながら「いいですよ、今は俺も暇してましたし」と言った。
そして僕たちは彼の部屋に入りテーブルに着席しお茶を飲みながら話をした。
「僕は昨日パンヤ島に来ました。そして掲示板であなたの名前を見たんです。手本にしたいと思って声をかけたんです。」
「うーん…初心者が手本にできるようなものはないけどとりあえず打ちますか」と彼はお茶を一口のみ言った。
僕はせれでいいと言い話を終わらせた。
そして彼と僕は別れ僕は自室へ、彼も自室へ戻った。
時間は12時半。
まだ時間はあるけど僕は部屋でくつろぐことにする。
そして3時半。
僕はラウンドの準備を整えice spaへと向かった。
着いた頃には15分過ぎすでに彼はホール脇のベンチに座っていた。
僕も時間が来るまでベンチに座る。
僕は少し緊張している。
何しろ初めて他人と対戦するのだ。
ハンターをやっていた頃だって仲間と行動を共にしたことはないのである。
まあ、村人たちと行動を共にした事はあるが…
依頼は常に一人で請け負っていたし、パーティーを組んで魔物を討伐したことも無いから他人との行動の仕方がわからない。
とは言っても、故郷では幼いころから一緒にいた彼女とは遊んでいたが、逆に言えば彼女しかいなかった。
彼女はとても大切な人だ。
彼女がいたから僕は今までやってこれたのだ。
話はそれたが僕は初めて他人と行動を共にする。
その事で緊張している。
そうこうしている間に時間は午後4時。
対戦の時は来た。
先番は僕、見学に来た時の通りに前方のなだらかな場所に打つ事が出来た。
次に彼の番、構えからすると山の方に打つのだろうか?
なぜ?
答えがわからないまま彼が打つのを見る。
彼が打ったボールは山と山の間の裂け目を飛び斜面を転がりそしてそのまま転がったボールは複雑な円形の場所へとたどり着いた。
僕は言葉もない。
こんな打ち方があるなんて。
彼は「よしっ!」と言った。
僕はさっき落とした所から複雑な円形に向かってボールを打つ。
打ったボールは穴を過ぎてしまった。
こんなに離れてしまって、次、入るかな。
そして彼は打ったボールの所まで行きパターを構える。
そして打つ。
打ったボールは左右に転がりながら穴に向かっていく。
そして入った。
彼は穴に入ったボールを拾い上げ「よしっ!絶好調!」と言った。
僕は自分の打ったボールの所に行きパターを構える。
どの方向に打てばいいのかわからないが穴に向かって打てば間違いないだろう。
そういう判断で穴に向かってボールを打つ。
が、
ボールはあらぬ方向へと転がる。
ボールは穴に入らなかった。
なぜだ?と思うと円形は傾斜があった。
それによってボールはあらぬ方向に転がったのだ。
再び僕はボールの所に行きパターを構える。
そしてボールを打つ。
今度は入った。
彼のスコアがー2で僕が0。
出だしはこんなものだった。
次のホールは彼が先番だった。
彼がボールの後ろで1番ドライバーを構える。

錯覚か?
ドライバーを構える彼からはオーラのようなものが出ている。
見るとドライバーも鈍く光っている。
構え方もさっきと違うような気がする。
彼はドライバーを振り下ろす。
フェースがボールに当たった瞬間爆音が轟く。
ボールは炎を上げながら円形へと向かう。

僕は今見たものが信じられない。
そりゃたしかに魔法があるのは知ってる。
ギルドの知り合いにも何人か魔法を使う人はいる。
しかし、無詠唱で魔法を使うなんて。
これは一体何なのだろうか?
僕がそう考えているとボールは穴付近に着弾した。
そう…着弾したとしか表現できない。
そして後方へと転がり穴に入った。
僕は茫然とその光景を眺めるほかない。